最近読んだ漫画の話。

青野くんに触りたいから死にたい」という漫画を読みました。
感想を綴っておきます。多少のネタバレを含みます。

 

最初に見たのはツイッターの誰かのつぶやき。
現在五巻まで出ていてその表紙は本屋で見たことがあるなあ、とぼんやり思い出すくらいの取り留めのないキッカケだったかと思う。

 

一巻だけとりあえず読んでみるかと購入。
最初は、割と人気者のこの男の子・青野と奥手な主人公・刈谷が片思いを経て恋人になる、よくある少女漫画的な話なのかなと思った。
読み出して数コマでまず主人公のイメージがぶち壊される。
え?って感じ。え?いきなり?そこに行く?え??って感じ。しかし、いいスタートダッシュだ。
うんうん、なかなかチャーミングじゃない?頑張り屋な子っていいよね。
なんて感じで進めて行くが、半分も読んでないのにいきなり崖から突き落とされる展開になり、は?え?この後どうするの?と言うのが沸き上がった率直な感想だった。
いや落ち着け私。この漫画は五巻まで出ているんだ。そんなここで「はいおしまいです」みたいな展開にはならない筈なんだ。
既にこの時点で『五巻まで出ている』という事に訳のわからない安心を見出して更に読み進める。
『五巻まで出ている』というのは時に人に希望を抱かせる。なんて素晴らしい事柄なんだ。
しかし、最初にトントン拍子に事が進むというのは、この先に待つものが長く困難な事になるんだと気づくべきだったのかもしれない。
一巻にしてタイトルの意味を知る。それはそうなっちゃうよね。
それにしても主人公が傾きすぎているが、好きな人への思いに素直という点で突き進んで行くからいっそ清々しい。

 

一巻で青野の友人の藤本という、ちょっととっつきにくそうな感じのクラスメイトが出てくる。
皮肉そうに笑ったかと思えば感情の溢れかえりを抑えることが出来ずに涙を流す。
これは後々わかる事だが、この漫画の登場人物の大半は思いの外感情表現が上手くないのかもしれない。
このくらいの年代ならばあり得る事柄なのだろうが、そこを上手く描けていると思う。
そしてもう一人、堀江という主人公のクラスメイトが出てくる。
クールな感じの子なのかと思いきや、藤本と対照的に表情はコロコロ変わる。
この堀江ちゃんが実によくて、ホラー映画大好きな引きこもりの女の子。
大好きすぎてホラー映画の話になると食い気味に語り始めてくれるとてもいいキャラをしている。ここは多分めっちゃ早口。いいですね、口下手で恥ずかしがり屋なだけなのかな?

この藤本くんと堀江ちゃんと主人公がどうして知り合うのかというキッカケが、彼女の意中の人である青野くんだからなんですね。
この誰かと誰かが繋がる瞬間が主人公にとっての世界の広がりになって、物語が進んで行くと。


そして気が付けば五巻まで読み進めて時間が経つ。
けれど私はこれを読んでいる最中、ずっとゾワゾワしたものを感じていた。
例えるなら、予感したよくない事が丸ごと的中して、これからも的中すると確信してしまうような後味と気味の悪さにも似た感覚と言えばいいのか。
巻が進むごとに登場する人物も増え賑やかになるが、同時に謎も不穏さも増えていく。
一言で表すならば『恐怖』。
阿鼻叫喚するのではなく、じっとりとまとわりつくような嫌な感じの方の恐怖だ。
直接的な描写は少ない方だと思うが、全編にわたってもう一人の青野の思念が漂っているような違和感を感じるせいだろうか。
一定のラインを越えないギリギリのところを行ったり来たりしているようにも思えてなるほど、一歩違えば癖になりそう。

 

五巻がまた絶妙な終わり方をしていて、この先二人がどのような手段を取って答えを出して行くのか非常に気になります。
皆さんも宜しければ一読してみてください。